〜梨子'sハウス、朝〜
梨子「ふあ……」
梨子(何とも言えない天気だなあ)
ピピピッピピピッ
梨子「あらら?」
梨子(目覚ましより早く起きちゃったんだ)スマホペッペッ
梨子「……曜ちゃん」
梨子(こっそり撮った曜ちゃんの写真……可愛い……)キュン
梨子「……今日こそ告白できないかな…………なんて。……無理か」キガエキガエ
梨子「……」チラッ
梨子(曜ちゃんはもっと遅く出てくるから、暫く家で待っとこうかな)
梨子「おはよ、お母さん」
梨子母「あら、おはよう。今朝ご飯の支度してるからもうちょっと待ってて」
梨子「はーい」
<サクヤ、ゲンバカラトウボウシタハンニンハ…
梨子母「物騒ね……長泉で事故起こして逃げてるらしいわよ」
梨子「あそこ、事故多いんだっけ。曜ちゃんがそんな感じの事言ってた気がする」
梨子母「高校生も知ってるってことは、そんだけ危なっかしい道なのね……あっ!」パリーン
梨子「お母さん!?大丈夫?」
梨子母「ええ……。やあねぇ。お皿落としちゃうなんて」
梨子「そんな事もあるよ」
梨子(曜ちゃん……居るかな……)
梨子「あっ……!」
梨子(歩いてる……今から出たら……丁度……っ)タタタ
梨子「行ってきます!」ガチャ
梨子母「あらら?行ってらっしゃい!気をつけてね」
梨子「はーい!」
曜「……あ、梨子ちゃん!おはよ!」
梨子「あ、よ、曜ちゃん!おはよう。ビックリしちゃった」テクテク
曜「ふふ、私も。……ん?昨日も似たような事言ってなかった?」テクテク
梨子「そ、そんな事…………そ、そうだっけ?」テクテク
曜「うーん、気のせいかも?…………なーんて、絶対言ったと思うな」テクテク
梨子「そ、そんな事ないもん!」カオマッカ
曜「え〜?実は私が来るタイミングで家出てるとか?」ニヤニヤ
梨子「もう!自分で言ってて恥ずかしくないの!?」マッカッケ
曜「梨子ちゃんの方が恥ずかしがってるじゃん?」テテテ
曜「お顔見せてよ♡」クルッ
梨子「きゃっ……」
曜「ふふ、やっぱり照れてる♡」
梨子「もう!もう!前見ないと危ないんだからね!!」テクテク
曜「あはは♡ツンデレ梨子ちゃんだ。……ってうお!?」コケッ
梨子「!?曜ちゃん!!」
曜「う゛っ!!」ガン!!
梨子「よ、曜ちゃん!しっかり!曜ちゃん!!」
曜「…………」ドクッドクッ
「どうしたの?」
「わ、渡辺さんが!!」
梨子「そんな……そんな……!き、救急車……!救急車!!」
「血が……血が…………」
「け、警察も呼ぶ!?」
ワーワー……
曜ちゃんは病院に搬送され、治療の甲斐なく帰らぬ人となった。
頭部を強打した事による脳挫傷だった。
────────────
──────
──
〜梨子'sハウス、夜〜
梨子「…………」
梨子(曜ちゃんのお母さん……私のせいじゃないって言ってくれたけど……)
梨子(それでも……)ポロポロ
梨子「嫌だ……嫌だよ……曜ちゃん…………」ポロポロ
梨子「もう会えないなんて…………ぐすっ…………嫌だ…………」
梨子「嫌…………いや………………」
梨子「会いたい………………もう1回会いたいよ………………」
梨子「………………………………」
梨子「………………すぅ……………………」
梨子「…………よう………………ちゃ……………………」ポロポロ
────────────
──────
──
〜梨子'sハウス、朝〜
ピピピッピピピッ
梨子「…………もう…………朝……なの」
梨子(……ああ、そういえば昨日…………曜ちゃんが……)
梨子「…………」
梨子「っ…………っ……………」ポロポロ
梨子(あんまりだよ……曜ちゃんが、曜ちゃんが何をしたの……?こんなの……こんな事……)ポロポロ
ピピピッピピピッ
梨子(……目覚まし、止めなきゃ)スッ
梨子「……えっ」
梨子(これ……昨日の日付…………?)
梨子「回線調子悪いのかな……?」
梨子(……曜ちゃん)
梨子「もう会えないなんて…………辛すぎるよ…………」ポロポロ
梨子「………………おはよ」
梨子母「あら、おはよう。今朝ご飯の支度してるから……ってどうしたの?目真っ赤よ?」
梨子「……」
<サクヤ、ゲンバカラトウボウシタハンニンハ…
梨子「!?」
梨子母「物騒ね……長泉で事故起こして逃げてるらしいわよ」
梨子(これ……昨日のニュース?テレビの日付も……昨日のもの!?)
梨子母「危なっかしい道なのかしらね……あっ!」パリーン
梨子「お母さん!?」
梨子母「あら……。やあねぇ。お皿落としちゃうなんて」
梨子「そんな……事って…………ってことは!」ダッ
梨子母「梨子!?」
梨子(曜ちゃん……!曜ちゃん!もしかしたら!)
梨子「あっ……!ああっ……!」
梨子(歩いてる……!曜ちゃんだ!間違いない!曜ちゃんだ!!)タタタ
梨子「行ってきます!」ガチャ
梨子母「梨子!?ちょっと朝ごはんは!?」
梨子「帰ったら食べる!!」
梨子母「えぇ……!?」
曜「あ、ふふ。梨子ちゃんおはよ!そんなに急いでどうし」
梨子「曜ちゃん!曜ちゃん!!曜ちゃぁん!!」ギュッ!!
曜「わわっ!?」
梨子「曜ちゃん……曜ちゃん……会えた……また……また…………」ポロポロ
曜「もう、そんなに会いたかったの?」
梨子「えへへ……」
曜「ちょっと……恥ずかしいから何か言ってよ……」テレ
梨子「ううん、会いたかったから……。何も間違ってないよ」ギュゥ
曜「く、苦しいよ……色々と……」
梨子「え?……あ、ごめん」
曜「もう、苦しいやら小っ恥ずかしいやらで頭の中こんがらがってるよ」クス
梨子「えへへ、ごめんね。……学校行こ?」
曜「うん。それにしても、どうしたのさ。変な夢でも見ちゃった?」テクテク
梨子「夢……?」テクテク
梨子(そっか……あれ夢だったんだ。そうだよね、こんな事ある訳ないんだし。ドラマじゃないんだから)
梨子「うん……実はそう」
曜「ふふ、そんな事だろうと思った」クルッ
梨子「もう、前見ないと危ない……よ…………?」
曜「お目目真っ赤っかだよ。梨子ちゃん」クスクス
梨子「…………」
梨子(もし……もしも夢じゃなかったら……?曜ちゃんはここで)
曜「梨子ちゃーん?どうかし、うお!?」コケッ
梨子「曜ちゃん!!」ガシッ
曜「おへっ!?」
梨子「っ!?」
梨子(支えきれない!だったら!!)グイッ!ギュッ
曜「梨子ちゃ!」
ズテーン!
梨子「あいたたたた……」
曜「いてて、梨子ちゃん!だ、大丈夫?」アセ
梨子「ううん、大丈夫。尻もち着いちゃっただけ」
曜「ごめんね……ビックリした…………のは梨子ちゃんだよね、きっと」
梨子「…………そうだね」
曜「……?」
梨子(夢じゃ……ない…………?)
曜「……梨子ちゃん。ホントに今日どうしちゃったの?もしかして具合悪い?」
梨子「ううん、大丈夫。考え事してただけ。行こ?」テクテク
曜「うん」テクテク
────────────
──────
──
梨子「……ふふっ」
曜「……どうしたの?」
梨子「曜ちゃん、おへっ!?なんて言ってたね」クスクス
曜「ちょっと!言わないでよ……咄嗟に出ちゃったんだよぉ……」テレ
梨子「ふふふ♡曜ちゃんってたまにぼーっとしてるもんね♡仕方ないよ♡」
曜「もう、何意味分かんない事言ってるのさ」クス
梨子「ホントの事だもん♡」
曜「もう!うりうり!!」モギュモギュ
梨子「やあっ!!♡何するの!?」
曜「痴漢注意って書いてあったから」
梨子「意味分かんない事言ってるのは曜ちゃんだよ!」
曜「へへへ♡お返しだよ」
梨子「むー!だったら私にも考えがあるもん!……この人痴漢でーーす♡」キャッキャッ
曜「ちょ、ちょっとー!」
クスクス
曜「もう!笑われちゃったじゃんかー!」アハハ
梨子「曜ちゃんが悪いんだもん♡」
曜「もう……今日の梨子ちゃんテンションたか」ドゴッ
梨子「…………え?…………何今の音」
「キャーーー!!」
「わ、渡辺さーん!!!」
梨子「え…………?え………………?……嘘、嘘だよね…………?」
曜「……」グシャ…
梨子「なに、これ…………なんで、こんな、岩が…………」
梨子(落石……?そんな事…………そんな…………)
「どうすればいいの!?これ!?」
「う…………うぷっ!」タタタ
梨子「いや…………なんで………………助かったと…………思ったのに…………」ペタン
ワーワー……
曜ちゃんは病院に搬送され、治療を受けることも無く亡くなった。
死因は落石による外傷性心肺損傷と出血性ショックだった。
────────────
──────
──
〜梨子'sハウス、夜〜
梨子「なんで…………なんで………………」ポロポロ
梨子(なんで曜ちゃんがこんな目に遭わなきゃならないの?)
梨子「曜ちゃん…………曜ちゃん………………」ポロポロ
梨子「でも、もし……もしまた…………会えたなら…………」
梨子「今度こそ…………」
梨子「…………曜ちゃん」ポロポロ
梨子(会いたい…………また、会いたい…………)ポロポロ
────────────
──────
──
〜梨子'sハウス、朝〜
梨子「ふあ……」
ピピピッピピピッ
梨子「…………」ホロ…
梨子「ん……?」
梨子(寝ながら泣いちゃったのかな……)
ピピピッピピピッ
梨子「そうだっ!!」ガバッ
梨子(日付……!日付……!)スマホペッペッ
梨子「……また、戻ってる」
梨子「…………」
梨子(まだ本当に戻ったっていう確信は無いけど)
梨子(会いたい)
梨子「曜ちゃんに……会いたい……」
梨子「おはよ、お母さん」
梨子母「あら、おはよう。今朝ご飯の支度してるから……ってどうしたの?目真っ赤よ?」
梨子「変な夢見ちゃって」
梨子母「そう……」
<サクヤ、ゲンバカラトウボウシタハンニンハ…
梨子母「物騒ね……長泉で事故起こして逃げてるらしいわよ」
梨子「怖いね」
梨子(やっばり時間が戻ってる……)
梨子母「危なっかしい道なのかしらね……あっ!」パリーン
梨子「大丈夫?」
梨子母「ええ……。やあねぇ。お皿落としちゃうなんて」
梨子「…………」
梨子(曜ちゃん……そろそろ……)
梨子「居た……!」
梨子(曜ちゃんだ……曜ちゃんだ……っ)ウル…
梨子(早く……早く……っ!)タタタ
梨子「行ってきます!」ガチャ
梨子母「あらら?行ってらっしゃ……って何かあったの!?」
梨子「何もないよ!」ポロポロ
曜「……あ、梨子ちゃん……ってどうしたの!?」
梨子「曜ちゃん!!曜ちゃん!!曜ちゃぁぁん!!!」ギュッ!!
曜「ぐぅえっ!……ど、え?何が……」
曜「……」チラッ
梨子母「!?」ギョッ!?
梨子母「……!」ブンブン
曜「……一体どうしたの?梨子ちゃん」
梨子「ううん……なんでもない……なんでもないの……」ポロポロ
曜「そんな感じに見えないけど……」
梨子「また……会えて嬉しいの……」ポロポロ
曜「え、ええ……。昨日も会ったじゃんね……」クス
梨子「うん……。それでも、毎日……毎日会いたいから……」ギュゥ
曜「会う度これは重いよぉ……」ギュ
梨子「えへへ……ぐすっ…………受け止めてね……」ギュ
曜「は、恥ずかしいからお巫山戯言ってよ!す、滑っても良いからぁ!」
クスクス
ラブラブダー
曜「うぁぁぁぁ……恥ずかしぃ…………」カオマッカ
梨子(曜ちゃん……暖かい……)ギュ
曜「も、もう行くよ!!」ニギッ
梨子「あっ……」
梨子(手……繋いでくれた……)
梨子「うん……!」テクテク
曜「もう、朝から恥ずかしい事言ってぇ……」テクテク
梨子「えへへ♡顔赤い曜ちゃんも可愛いよ」
曜「もう……今日の梨子ちゃん変だよ……」プイッ
梨子「そんな事無いもん♡こっち向いてよ」
梨子(あ……)
曜「もう、何さ……んぇっ!?」コケッ
梨子(やっぱり!!)ギュッ
曜「ちょっ!!」
梨子「えいっ!」ドサッ
曜「きゃあっ!あたたた……って梨子ちゃん大丈夫!?」
梨子「うん、大丈夫だよ。曜ちゃんは?」
曜「私も大丈夫。ビックリしちゃった」
梨子「……えへへ、私も」
曜「立てる?」
梨子「うん」
────────────
──────
──
梨子「…………」
曜「どうしたの?考え事?」
梨子「え…………うん。ずっと手を繋いでくれてるなあって」クス
曜「え……?あわわ、気付かなかった!」テレ
梨子「えへへ♡離さなくても良いよ♡」ニギッ
曜「うぅ……恥ずかしいよ……」テレ
梨子「えへへへ♡」
曜「もう、しょうがないなぁ」
梨子「やった」ルンルン
曜「ご機嫌さんで何よりでございますよ」
梨子「ふふふ♡曜ちゃんもご機嫌に見えるよ」
曜「あはは、気の所為だよ」
梨子「え〜…………あっ……」
梨子(痴漢注意の看板……この辺りだよね)
梨子「よーおちゃん!」グイッ!
曜「わわわっ!どうしたのさ」
梨子「こっち側歩こ?」
曜「えぇ……?まあ良いけど……」
梨子「……」
梨子(他の人に当たらないよね)アセ
カラカラ
梨子「小石……?」
梨子(もしかしたら!)
曜「?」
梨子「落石!!皆水族館に寄って!!」
曜「え!?」
「え!?え!?」
「マジ!?」
カラ…
ガララララッ!
ドゴォ!!
梨子「………………ふぅ」
梨子(改めて見ると、人の頭より大きい……。こんなの当たったらそりゃ……)ゾッ
曜「………………」
梨子「曜ちゃん?大丈夫だった?」
曜「え?うん……大丈夫だよ」
「怖かったー……」
「桜内さんのお陰だよ」
梨子「えへへ……」
曜「……ホントだね。梨子ちゃんのお陰だよ!」
梨子「よ、曜ちゃんまで……恥ずかしいよ」テレ
曜「あらら?さっきまで余裕ぶっこいてた梨子ちゃんはどこ行ったのかなー?♡」
梨子「も、もう!余裕こいてなんか無いもん!」
────────────
──────
──
〜浦の星女学院〜
曜「梨子ちゃん!待ちに待ったプールの授業だよ!」
梨子「ふふ、さっきからずっとその話だね」
曜「だってずっと楽しみだったんだもん。ほらほら!早く更衣室行って、着替えてプール入ろ!」
梨子「ふふ、はいはい」
曜「今日は良い天気だから、きっと気持ち良いよ!」ウキウキ
梨子「そうだね。ただ浸かってるだけなら良いんだけどなあ……」
曜「えー、泳ぎたくならないの?」
梨子「遊びたいのは遊びたいけど、泳ぎたいとは思わない……かも?」
曜「むむむ……泳ぐのも楽しいのに……」
梨子「ふふふ、そんなに楽しいならやってみようかな」
曜「ホント!?じゃあ今日教えてあげるね!」
梨子「勝手な事したら怒られちゃうよ」クス
曜「ダメかなあ」クス
「きゃあーー!!」
パリーン!!
梨子「何の音……!?きゃあ!!」
梨子「いたっ……っ……!何!?これ!?」
パラパラ…
梨子「ガラス……?」ツー
「ごめん!大丈……きゃああああああ!!」
梨子「え……?」
曜「……」ドクッドクッ
梨子「ガラスが……頭に…………刺さっ…………」ツー
「渡辺さん!しっかり!」
「救急車呼んで!!」
梨子「曜……ちゃ…………曜ちゃ…………」ドサッ
「桜内さん!動いちゃダメよ!!」
「もしもし!く、クラスメイトが!あ、ああ頭に!頭にガラスが!」
梨子「だめ、なの……曜……ちゃん……!曜ちゃ……!死んじゃ…………」
梨子「わた……しの…………だい………………す……………………」パタッ
私と曜ちゃんは病院に搬送された。私は頭を数針縫い退院したが、曜ちゃんは治療の甲斐無く帰らぬ人となった。
頭にガラスが刺さった事による失血死だった。
────────────
──────
──
〜梨子'sハウス、夜〜
梨子「………………」ポロポロ
梨子(また……失敗しちゃった……)
梨子「曜ちゃん…………ごめんね……………ごめんね………」ポロポロ
梨子「…………」ポロポロ
梨子(……いや、泣いてるばっかじゃダメ!)
梨子「今度こそ…………今度こそ!」
梨子「…………曜ちゃんを助けるんだ」
梨子「……」
梨子「まずは色々整理してみようかな」
梨子(多分、何となくだけど、時間を戻す鍵は曜ちゃんに会いたいっていう思い……だと思う)
梨子(毎朝大体同じ時間に起きて、支度して、お母さんが朝ごはん作ってるって言って……事故のニュース見て……お皿割って……)
梨子「えーと…………そうだ、曜ちゃんを見つけるんだ」
梨子(……というか、歩いてくるが正しいのかな)
梨子「その後、転倒して死んじゃう。その後は落石。……それで、ガラスが刺さる」
梨子(午前中だけで3回)
梨子「これを回避できたとしても、油断できない……!」
梨子(……とはいえ、今分かってる死因を回避した後に私にできることは、周囲に気をつける位しかない)
梨子「……それでも」
梨子「それでも、曜ちゃんの為に……頑張るんだ……!」
────────────
──────
──
〜梨子'sハウス、朝〜
梨子「ふあ……」
ピピピッピピピッ
梨子「……」スッ
梨子「……よし、時間が戻ってる」スマホペッペッ
梨子「頑張ろう」
梨子「……」ソーッ
梨子「……縫った跡無い」
梨子(……ある意味、便利なのかな?)
梨子「おはよ、お母さん」
梨子母「あら、おはよう。今朝ご飯の支度してるからもうちょっと待ってて」
梨子「うん」
<サクヤ、ゲンバカラトウボウシタハンニンハ…
梨子母「物騒ね……長泉で事故起こして逃げてるらしいわよ」
梨子「あそこ、事故多いみたいね」
梨子母「お友達から聞いたの?でもそんだけ危なっかしい道なのね……あっ!」パリーン
梨子「大丈夫?」
梨子母「ええ……。やあねぇ。お皿落としちゃうなんて」
梨子「そういう日もあるよ」
梨子(曜ちゃん……曜ちゃん……)
梨子「あっ……!」
梨子(行かなきゃ)
梨子「行ってきます!」ガチャ
梨子母「あらら?行ってらっしゃい!気をつけてね」
梨子「はーい!」
曜「……あ、梨子ちゃん!おはよ!」
梨子「おはよ、曜ちゃん」テクテク
曜「なんだか元気……だね?」テクテク
梨子「ふふ、何で疑問形なの」
曜「いや、なんとなーくそう思ったからさ」
梨子「何それ」クス
曜「ふふふ、なんだろ。何と言うか、何時もの大人しそうな梨子ちゃんと違って…………凛々しい感じ?」
梨子「もう、そんな事言って」
曜「ほら、お顔もいつもよりキリッと……うぉっ!?」コケッ
梨子(来たっ!)
梨子「曜ちゃん!」グイッ!!
曜「うぉっと!?」
梨子「んみゅっ!」ギュッ
曜「んんっ」ギュッ
梨子「ふう……大丈夫?」
曜「ふぇ、う、うん……ありがとう」
梨子「ふふ、良かった」
曜「…………えと」
梨子「…………?」
曜「そろそろ、離してくれても……良いのかなって……」
梨子「え?」ギュー
キャーキャー
クスクス
曜「その、恥ずかしいし……」テレ
梨子「今日はこのまま行こっか♡」
曜「純粋に歩きにくいよ!?」
────────────
──────
──
曜「うぅ……」テレ
梨子「どうかしたの?今日、口数少ないね」
曜「そりゃ……皆が見てる前で恋人繋ぎしながら登校したらそうもなるよぉ……」カオマッカ
梨子「ぎゅーしながらは嫌だって言うから……」
曜「せめて普通に繋ごうよ」テレ
梨子「えー……折角だし♡」ニコ
曜「もう、何が折角なのさ……」テレ
ウレシイクセニー
曜「い、いいい今何か聞こえたんだけどぉ!?」
キャーキャー
梨子「えへへ♡嬉しいんだ……♡」テレ
曜「いやだから、これはですね……」カオマッカ
梨子「ふふ、なあに?♡」
曜「えーと……」アセアセ
梨子「ふふふ♡…………っ!」
梨子(あの看板が見えてきたってことは……)
カラカラ
梨子(小石……!もう落ちてくる!!)
梨子「曜ちゃん!!」グイッ!
曜「ふぇえ!?またぁああ!?」
梨子「皆!!水族館の方に寄って!!すぐに!!」
「えっ!?」サッ
「こ、こっち!?」ササッ
ガララララッ!
ドゴォ!!
梨子「……よし」
曜「よし…………?」
梨子「ふぇ?うん、曜ちゃんが怪我しなかったから」クス
曜「そ……そう。………ありがとね!」ニコ
梨子「うん!」ニコ
スゴーイ!!
リコチャンノオカゲネ!
曜「そうだね!ありがとう!」
梨子「えへへ♡どういたしまして!」
────────────
──────
──
〜浦の星女学院〜
曜「梨子ちゃん!待ちに待ったプールの授業だよ!」
梨子「ふふ、そうだね」
曜「もう!テンション低いよ!プールだよプール!ほらほら!早く更衣室行って、着替えてプール入ろ!」
梨子「はいはい♡」
曜「今日は良い天気だから、きっと気持ち良いよ!」ウキウキ
梨子「そうだね。少し暑くて調度良いね」
曜「だよね!」
梨子「………」
梨子(窓ガラスが割れるんだよね。詳しい場所分からないけど、もうそろそろのハズ)
曜「梨子ちゃーん!聞いてるの!?」
梨子「わっ!……ごめん、考え事してたよ」
曜「もう!曜ちゃんが折角楽しいプールの過ごし方を伝授してたというのに……」
梨子「ふふふ、アテになるの?それ」クス
曜「なるよぉ。……多分」クス
「きゃあーー!!」
パリーン!!
梨子「っ……!」
梨子(この場所!でも今は!!)
梨子「曜ちゃん!!」グイッ!
曜「きゃあ!?」
バリーン!!
梨子(大きいのは間一髪助かった!後は!)ガバッ
曜「り!梨子ちゃん!!!」
梨子「っつ!…………くっ……!」
パラパラ
「ごめん!大丈夫!?」
梨子「だ……大丈夫です……」ツー
曜「り、梨子ちゃん!頭から血が!!」
梨子「え?」ツー
曜「待っててね!すぐ救急車呼ぶから!」
「どうしたの!?わっ!!」
「私先生呼んでくる!」
梨子「ま、待って!そんな事したら!曜ちゃんが!!」
曜「私は無事だよ!!それより今は梨子ちゃんの方がどう見てもやばいよ!」タタタ!
梨子「あっ……!」
梨子(そんな……待って…………)
私はその後救急車で運ばれ、検査を受けた。
幸いにも大きな傷は無く、止血した後そのまま自宅に帰った。
そして、曜ちゃんがプールで足をつり、溺死した事を聞いた。
────────────
──────
──
〜梨子'sハウス、夜〜
梨子「…………」ポロポロ
梨子「………………なんで」ポロポロ
梨子「なんで、なんで、なんで!なんで!!!」
梨子「なんで……!なんで、こんな事するの…………。誰が、誰が曜ちゃんにこんな事するの……」ボロボロ
梨子「こんなの…………」ボロボロ
梨子「……」
梨子「っ……」グシグシ
梨子「まだ、まだ終わった訳じゃ、ない……!」
梨子(そうだ。私が怪我したり、何かあって曜ちゃんから離れたら、曜ちゃんは無防備になるんだ)
梨子「すぅ…………はぁ…………」
梨子(その事を念頭に、明日こそは……!)
────────────
──────
──
〜梨子'sハウス、朝〜
梨子「んぅ……」
ピピピッピピピッ
梨子「……」スッ
梨子「……戻ってる」スマホペッペッ
梨子「今日こそ頑張ろう」
────────────
──────
──
〜浦の星女学院〜
梨子(転倒も落石も防いで、ここまでどうにか無事に過ごせた)
曜「梨子ちゃん!待ちに待ったプールの授業……って聞いてる!?」
梨子「うん、聞いてるよ」
曜「もう!テンション低いよ!プールだよプール!ほらほら!早く更衣室行って、着替えてプール入ろ!」
梨子「うん。今日良い天気だから気持ち良いよ」
曜「だよね!」ウキウキ
梨子(……あそこの窓だよね)
梨子「曜ちゃんっ」ギュッ
曜「わわっ!どうしたのさ」
梨子(こうやって足止めして、時間稼ぎすれば良かったんだ)
曜「梨子ちゃーん!聞いてるの!?」
梨子「えへへ♡暖かいなって」
曜「もう……熱くなって来たってのに。梨子ちゃんって寒がりだったっけ?うりうり」ムギュムギュ
梨子「やぁっ♡えへへへ♡」
曜「あはは♡楽しそうですなあ」ムギュムギュ
梨子「んんーっ♡」
「きゃあーー!!」
パリーン!!
梨子「来たっ」ギュー
曜「え!?え!?」
パラパラ
「ごめん!大丈夫!?」
梨子「大丈夫です!」
曜「…………はい!」
「どうしたの!?わっ!!」
「私先生呼んでくる!」
梨子「怪我無い?」
曜「うん……梨子ちゃんのお陰だよ。朝の落石も含め」
梨子「えへへ♡どういたしまして」
曜「………」
梨子「曜ちゃん?」
曜「……なんでもない。行こ?」ニコ
梨子「うん♡」ニコ
────────────
──────
──
〜浦の星女学院、プール〜
梨子「もう!最低!人が着替えてる時に!」プンスコ
曜「あははは♡朝イチ抱き着いて恥ずかしい思いさせたお返しだよ!」
梨子「うぅ……!」
梨子(転倒防ぐ時、抱き着くと更衣室でおっ…………揉まれるのかな…………)カオマッカ
曜「ほらほら、準備体操始まるよー!」ニコ
梨子「分かってるよお……!」
イチニーサンシー
ニーニーサンシー
梨子(曜ちゃん……綺麗だなぁ……)
梨子(…………)
梨子(同じ高校生のハズなんだけどなぁ……)シュン
「コラー桜内ー。渡辺の胸と自分の胸見比べて何してるんだー?」
「あはははっ」
「さっき後ろからいっぱい揉みしだかれてたもんねー♡」
梨子「も!もう!いいい言わないでくださいっ!」カオマッカ
曜「梨子ちゃんの控えめおっぱい、梨子ちゃんみたいで好きだよ!」ニコ
梨子「もーーー!!黙っててぇーーっ!!!」カオマッカ
「ははは!渡辺、今年のプール掃除担当、お前に決定な」
曜「なんでぇ!?」ガビーン
曜「ぷはっ…………はっ…………」バシャバシャ
梨子(曜ちゃん……泳ぐ姿とても綺麗。あんなに楽しく綺麗に泳げたら、確かに泳ぐの好きってなるかも)
曜「ふぁあ……!…………あ、おーい!」フリフリ
梨子「……!えへへ♡」フリフリ
ラブラブダー
キャーキャー
梨子「も、もう……」テレ
曜「えへへ♡……えいっ」ザプン!
梨子「あっ」
梨子(こっち来てる……曜ちゃん……っ♡)
梨子(でも、見とれてる場合じゃないよね。曜ちゃんはこの時間で足をつって……)
曜「ぷはっ…………はっ…………はっ……ゴボッ!」
梨子「っ!!!」
梨子(足つっちゃったんだ!!)バシャバシャ
「……あれ、曜ちゃんの様子おかしい?」
「渡辺!……渡辺!!」ザプン!
曜「ガハッハッ……たすっ!」
梨子「曜ちゃん!!」ダキッ
曜「りっ!梨子っ!!」
梨子「落ち着いて私に捕まって!」
曜「っ!」ギュッ
「渡辺!大丈夫か!」
曜「ゴホッ……ゴホッ…………はい、何とか……」
「無茶するな。とりあえず保健室に行こう」
梨子「私付き添います」
「すまないが頼む」
〜浦の星女学院、保健室〜
「足も問題無し。ピンピンしてるし大丈夫でしょう」
曜「はい」
「くれぐれも無茶はしないように、ね」
曜「分かりました」
カララ…ピシャッ
曜「ありがと、梨子ちゃん」
梨子「ううん、気にしないで。曜ちゃんこそ大丈夫?」
曜「うん、お陰様で。ちょっと浮かれてたみたい」
梨子「ふふ、曜ちゃんらしいね」クス
曜「もう、生きるか死ぬかの境目だったんだからね……」
梨子「……曜ちゃん?」
曜「……ん?どうかした?」
梨子「何か思い詰めた様な顔してたから」
曜「……いや、今日はなんだかついてないなって。ただついてないなら良いんだけど……何だか梨子ちゃんまで危ない目に遭ってるから……さ」
梨子「そんな事もあるよ。気にしないで」
曜「……うん」
梨子(……一瞬勘づいたのかと思っちゃった)
────────────
──────
──
〜浦の星女学院、教室〜
梨子「…………くぁ……」
梨子(プールの後の授業って、どうしてこんなに眠いんだろ)
曜「すぅ……すぅ……」
梨子(案の定寝てるし)
梨子「……」キョロキョロ
クー…クー…
ウツラウツラ
梨子(……まあそうなっちゃうよね)
梨子「ふぁ…………」
梨子(プールの後ってどうしてこんな眠くなっちゃうんだろうなあ)
梨子「……」カキカキ
ブーン…
梨子(なんか凄い羽音が……)
「わっ!でっかい蜂!」
「んぁ…………?」
「静かに。刺激しないように」
梨子「……すごっ」
梨子(あんな大きな蜂居るんだ……。怖いよりも驚きの方が勝っちゃった)
ブーン…ピトッ
曜「すぅ……んぁ…………?」
梨子「えっ……?」
「曜ちゃんに止まった」
「え、大丈夫だよね?」
梨子(大丈夫……だよね?流石に……)
プスッ
曜「んぐぁああ!?」ビクゥッ!
ブーン…
「あ!逃げてった!」
梨子「よ……曜ちゃん!?大丈夫!?」
曜「いったぁ……何があったの……?」
「私が授業してる最中お昼寝の所、蜂に刺されました」ゴゴゴ
曜「ヒェッ」
梨子「い、言ってる場合じゃないよ!お医者さんで診てもらお?ね?」アセ
曜「大丈夫だよ……それよりビックリした」
「……まあしかし、万が一という事もあるので、保健室で一度診てもらって下さい」
梨子「わ、私、着いていきます」
曜「大丈夫だよ」
「桜内さんは席に戻っ」
梨子「着いていきます!!!!」
曜「はい」
「はい」
ツヨイ…
ヨウチャンノコトニナルトスゴイネ
梨子「行こ?歩ける?」
曜「歩けるよそりゃ……」クス
────────────
──────
──
〜浦の星女学院、保健室〜
「足をつって溺れかけたと思えば、今度は蜂に刺されましたか」
曜「はい……」
「……消毒はこれで完了。もし具合が良くないなら少しベッドで休んでも良いですよ」
曜「はい。……じゃあ、少し休んでいきます」
「分かりました。少し所用があるので保健室を離れますが、安静にしておくように、ね。」
曜「分かりました……」
「桜内さんも、早く教室に戻るように」
梨子「はい」
カラカラ…ピシャッ
曜「ありがと、梨子ちゃん。……へへへ、プールで疲れたから折角だしぐっすりしとくよ」
梨子「もう、それは良いけど……あまり心配かけないでね」
曜「ふふ……お母さんみたい……」
梨子「だって、心配なんだもん」
曜「もう、過剰反応しちゃって…………」
梨子「……?どうしたの?」
曜「いや…………その、恥ずかしいなって思っただけで……」
梨子「ふふ♡弱気な曜ちゃんも珍しいね」ニコ
曜「もー、他人事だと思ってぇ……」クス
梨子「そんな事思ってないよ。私の事のように思ってるよ」
曜「よ、余計……恥ずかしいよっ」
梨子「ふふ♡そーお?♡」
曜「もう……私は大丈夫だから……先戻ってて?先生に怒られちゃうよ」
梨子「分かった……」シュン
曜「何度もありがとね……梨子ちゃん」ゴロン
梨子「うん!」
カララ…ピシャッ
梨子(そっぽ向いちゃった……。余程恥ずかしかったのかな)
梨子(保健室の中なら安心だよね)テクテク
梨子(危ない物も無いし、窓に鍵も掛かってるし)
梨子「……でも」
梨子(何か……何か引っかかる……)
梨子「なんだろ……このモヤモヤした感じ……」
梨子(まだ……終わってない……のかな)
曜『もう、過剰反応しちゃって…………』
梨子「…………過剰……反応?」
梨子「過剰反応…………蜂………………」
梨子(嫌な予感がする……!)キョロキョロ
梨子(授業中だから先生も誰も居ない……。今の内に)スッ
梨子(蜂……刺される…………)スマホペッペッ
梨子(…………)
梨子(死ぬ………………検索っと……)スマホペッペッ
梨子「っ!!」
梨子「嫌な予感がする……!」ダッ!
ガララララッ!
梨子「曜ちゃん!!」
ガハッ……カヒュッ……
梨子「っ!!」タタタ!
梨子「やだ……曜ちゃん!曜ちゃん!!」
曜「ゼェ…………カヒュ…………」
梨子「顔……凄い腫れてる……!きゅ、救急車呼ぶからね!」
曜ちゃんはこの後病院に搬送されたものの、治療の甲斐無く帰らぬ人となった。
ハチ毒によるアナフィラキシーショックだった。
────────────
──────
──
〜梨子'sハウス〜
梨子「……………………」
梨子(……あれ、今日何したんだっけ)
梨子「…………」スッ
梨子(もうこんな時間……。どうやって帰ってきたのかも分かんない)
梨子(枕濡れてる……泣いてたんだ)
梨子「そっか……私、また、守れなかったんだ」
梨子「はは………………」ポロポロ
梨子(何やってんだろ……私。時間が戻る事を良い事に何回も何回も曜ちゃんを殺して)
梨子「私が……私が死ねば良いのに……」ポロポロ
梨子「………………ぐすっ…………ううっ…………うぐぅ………………」ボロボロ
梨子「うぅ………………っ……………………っ………………」ボロボロ
梨子(………………それでも)
梨子(……それでも)
────────────
──────
──
〜梨子'sハウス、朝〜
ピピピッピピピッ
梨子「…………」スッ
梨子(もう、嫌…………。何もかも…………)
梨子「…………」
ピピピッピピピッ
梨子「うぅ…………」スッ
梨子「……戻ってる」
梨子「……願っちゃったんだ。また会いたいって」
梨子(…………やっぱり、諦めきれないよね)クス
梨子「大好きなんだもん……」
梨子「…………」スッ
梨子(曜ちゃん……)
梨子「おはよ、お母さん」
梨子母「あら、おはよう。今朝ご飯の支度してるからもうちょっと待ってて」
梨子「うん」
<サクヤ、ゲンバカラトウボウシタハンニンハ…
梨子母「物騒ね……長泉で事故起こして逃げてるらしいわよ」
梨子「あそこ、事故多いみたいね」
梨子母「お友達から聞いたの?でもそんだけ危なっかしい道なのね……あっ!」
梨子「おっと」キャッチ
梨子母「あら、ありがと、梨子。……やあねぇ。お皿落としちゃうなんて」
梨子「そういう日もあるよ」
梨子(曜ちゃん……曜ちゃん……)
梨子「っ……!」
梨子(……また、また死んじゃうのかもしれない)
梨子(…………でも。それでも、今度こそ)
梨子「行ってきます」ガチャ
梨子母「あらら?行ってらっしゃい!気をつけてね」
梨子「はーい」
曜「……あ、梨子ちゃん!おはよ!」
梨子「おはよ、曜ちゃん」テクテク
曜「朝から何か考え事?」テクテク
梨子「そう、かも?」クス
曜「なんで疑問形なのさ」クス
梨子「自覚してなかったから……」
曜「ふふふ♡悩める少女って感じのお顔だったよ」
梨子「もう、曜ちゃんだって私と同じ少女でしょ」
曜「女子高生は少女じゃないと思うなあー」シレッ
梨子「もー!!ああ言えばこう言うっ!!」
曜「あはは♡ごめんごめん」
梨子「もう、バカ……」クス
曜「あはは、漸く笑った」ニコ
梨子「笑わせようと思ってやってたの?」クス
曜「さぁ〜♡」
梨子「もう!イケズなんだから……!こうしてやる!♡」モッギュ
曜「きゃあ〜♡犯されちゃう〜♡」モギュ
梨子「えへへ♡」
梨子(…………あれ?)
曜「くっつき過ぎだよ〜!♡」
梨子(何も……起こらない?)
梨子「いつもと……違う……」
曜「え……?」
梨子(どうして?どうしてこんな事に?)
曜「梨子ちゃん……?」
梨子「ふぇ!?ああ、いや……い、いつもなら恥ずかしがるのになぁって……曜ちゃんが」
曜「……そうだね。……でも今日はなんか梨子ちゃん思い詰めてたからさ」クス
梨子「そっか……ごめん。……曜ちゃんが言った通り、ずっと色々考え事してたの」
曜「そうだと思った。何だか蝶々みたいに儚げだったよ」クス
梨子「ふふ♡曜ちゃんがそんな例え使うなんて、よっぽど酷い顔してたんだね」
曜「もー、そういう意味じゃないよー」クス
梨子「えへへ♡」
曜「あはは♡」
梨子(……それにしても、一体どういう事なんだろう)
────────────
──────
──
〜長井崎〜
梨子「…………」
梨子(あれから何も無かった。窓も割れなかったし、足もつらなかった。アナフィラキシーどころか教室に蜂も入ってこなかった)
梨子「遅いな……」
梨子(用事あるから先帰っててって言われたから、遅いも何も無いんだけれど)
ヒラヒラ
梨子「…………蝶々だ」
梨子(蝶々……そういえば、なんか、今の状況を表す言葉みたいなのが、あったような…………)
曜「……あれ?梨子ちゃん?」
梨子「あ、曜ちゃん。お疲れ様」
曜「もしかして待ってたの?」
梨子「うん」
曜「……そっか。ありがと」
梨子「ううん、一緒に帰りたかったから。……用事ってなんだったの?」
曜「ふぇ?……先生に呼び出されただけだよ。ほら、今日プールの後寝ちゃったでしょ?」クス
梨子「曜ちゃんが真面目に授業受けないのは何時もの事なのにね」
曜「………………」グサッ
梨子「あれ?曜ちゃん?」
曜「いや、サラッとエグい事言われたなって……」クス
梨子「ふぇ?……あっ」
曜「いや、気にしてないから大丈夫だよ」
梨子「その……寝顔とか、可愛いよ?」
曜「フォローの仕方が斬新過ぎる」
梨子「ね、寝起きで怒られて混乱してる所も可愛いよ!?」アセ
曜「そういう話じゃないよ!落ち着こ!?」
梨子「えーとえーと……!好き!!!」
曜「このタイミング!?」
梨子「あわわわわわ……!」
曜「おおお落ち着け!」ペチッ
梨子「んにゃっ!?…………ごめん」テレ
曜「ううん、大丈夫だよ」クス
梨子「私……何か口走ってた?」
曜「……ううん。聞かなかった事にしとく♡」
梨子「え……わ、私何か恥ずかしい事言ったって事だよね!?」アセ
曜「んーそうかもしれないし、そうじゃないかもしれない♡」
梨子「ちょっとー!言って!私何言っちゃったのー!?」モギュモギュ
曜「きゃあ!♡もー、そっちの方が恥ずかしいじゃんね♡」
梨子「そんな事無いもん!♡」モギュモギュ
曜「あははは♡」
梨子「えへへ♡」
ブロロロロロロロ!!
「キャーーー!!」
梨子「何?」
キキーーー!!
ブロロロロロロロロロロ!!
梨子(ぼ、暴走車!?歩道乗り上げて……!)
梨子「曜ちゃん!!危な」
曜「っ!!」ドン!
梨子「曜ちゃ……!」
ドゴッ!!…グシャッ
梨子「よ……曜…………ちゃん…………」
梨子(曜ちゃん……笑ってた…………?もしかして、私を、助けて…………?)
「女の子が轢かれたぞ!」
「あの車よ!」
梨子「っ!まだ……まだ……死、死んだ訳じゃ………………」
曜だったもの「」
梨子「あ…………あ……………………あぁ……………………」ペタン
梨子「また……また……………………」
梨子(しかも、今回も私のせいで……私の不注意のせいで……こんな事に……!)
梨子「うぅ…………うぅ……ぐすっ…………うああぁぁぁぁぁぁああああああん!!」ポロポロ
「君!しっかりするんだ……!落ち着いて……!」
「警察!警察呼んで!」
「きゅ、救急車も!」
ワーワー……
その後曜ちゃんはその場で死亡が確認された。
車に轢かれ、即死だった。
────────────
──────
──
〜梨子'sハウス〜
梨子「…………」ポロポロ
梨子(今までこんな事無かった。あそこまで無事だったのに、どうして突然……)
梨子「………………思い、出した」
梨子(バタフライエフェクトだ。でも、どうして突然……あれって、小さな事が大きな変化になる……みたいな意味だったハズなのに)
梨子「あっ……」
梨子母『お友達から聞いたの?でもそんだけ危なっかしい道なのね……あっ!』
梨子『おっと』キャッチ
梨子母『あら、ありがと、梨子。……やあねぇ。お皿落としちゃうなんて』
梨子(そうだ……私、今日割れるハズのお皿を受け止めたんだ)
梨子(まさか……それだけでこんな……)
梨子「……でも、もしそうなら」
梨子「……そうだ!!」
────────────
──────
──
〜梨子'sハウス、朝〜
ピピピッピピピッ
梨子「……」スッ
梨子「ふぁ……」
梨子「……うん、戻ってる」
梨子(試してみよう……!今度こそ上手くいくかもしれない……!)
梨子「おはよ、お母さん」
梨子母「あら、おはよう。今朝ご飯の支度してるからもうちょっと待ってて」
梨子「うん」
<サクヤ、ゲンバカラトウボウシタハンニンハ…
梨子母「物騒ね……長泉で事故起こして逃げてるらしいわよ」
梨子「あそこ、事故多いみたいね」
梨子母「お友達から聞いたの?でもそんだけ危なっかしい道なのね……あっ!」
梨子「ほいっと」キャッチ
梨子母「あら、ありがと、梨子。……やあねぇ。お皿落としちゃうなんて」
梨子「まあまあ」
梨子(曜ちゃん……曜ちゃん……)
梨子「……この光景、もう何回見たんだろ」
梨子(……上手くいけばいいな)
梨子(来た……)
梨子「行ってきます」ガチャ
梨子母「あらら?行ってらっしゃい!気をつけてね」
梨子「はーい!」タタタ!
曜「……あ、梨子ちゃん!おはよ!」
梨子「曜ちゃん!好き!!私と付き合ってください!」ギュッ!!
曜「ふぇあ!?」ボンッ!
梨子(小さな変化も……大きな変化に変わるかもしれないなら!……恥ずかしいけど)
梨子「私、曜ちゃんの事好き♡」
曜「お、おおおおおお、おう!?」カオマッカ
「すごーい、朝イチ告白なんて勇気あるー」
「桜内さん……ついに……」オーイオイ
曜「ちょ……あの、梨子ちゃ……?」
梨子「えへへ……返事聞かせて?♡」
曜「えと…………その…………人気の、無い……所で…………」モジモジ
梨子「はーい♡」ニギッ
曜「あの、これは……」
梨子「お手手繋ぐ」
曜「えぇ……」カオマッカ
キャー
キャー
曜「うぅ…………」カオマッカ
梨子「行こ?♡」
曜「はいぃ…………。梨子ちゃん…………何か、いつもと…………っ」
梨子「どうしたの?」
曜「…………いや、何にも」ニコ
梨子「えへへ♡」
梨子(……転けない。やっぱりいつもと違う事をすれば運命……?は変わるんだ)
梨子「もぎゅー!♡」ギュッ
曜「もう、暑苦しいよ」クス
梨子「えへへ♡……人気の無い所、今日はトンネルの中通ってこ?」
曜「……分かった」
梨子「むー、なんか突然元に戻った……。照れてて可愛かったのに……」
曜「あはは♡ビックリしたけど、なんやかんや何時もの梨子ちゃんだから」
梨子「そうかな……?」
曜「……そうだよ」ニコ
梨子「……?」
梨子(なんか、様子が変かも?……いつもと違う事してるからかな)
曜「ここ歩くの久しぶりかも」
梨子「いつも水族館の横歩いてくもんね」
曜「そうそう。あっちの方が安全だしね」
梨子「そうとも限らないかもよ」クス
曜「あはは♡梨子ちゃんに何されるのやら♡」
梨子「ふふふ♡何しちゃうでしょう♡」ギュッ
曜「もう♡おバカさんだなあ」ヨシヨシ
梨子「えへへ♡」ナデラレー
曜「もう、今度は甘えん坊?♡」ナデナデ
梨子「うん!♡」
曜「全く……♡」ナデナデ
ブロロロロロロロ!!
キャーー!!
曜「っ!?……な、何?」
梨子「!?」
キキーーー!!
梨子(ぼ、暴走車!?このタイミングで!?そんな!?)
ブロロロロロロロロロロ!!
梨子(と、とりあえず何とかしないと!!)
梨子「っ!!」ドン!!
曜「きゃっ!?」
キキーーー!!
梨子(私より、曜ちゃんを……!)
曜「梨子ちゃん!!危ない!!」グイッ!
梨子「きゃあっ!」
ブロロロロロロ!!!キキーーーーー!!
曜「ふぅ……間一髪だった」
梨子「えへへ、ありがと曜ちゃん」
梨子(猛スピードの車目の前にするとかなり怖い……)
曜「……良かった」ギュッ
梨子「きゃっ……曜ちゃん?」
曜「良かった……。ホントに良かった」ギュ
梨子「えへへ……♡」ギュ
梨子(曜ちゃん……震えてる…………怖かったのかな)
曜「こんな無茶……しないで欲しい…………」
梨子「……うん」
梨子(……もしかして、私、とんでもない事しちゃったのかな)
梨子(前回は夕方帰り道であの車が来たのに、今回は朝、トンネルで……)
梨子(私が、いつもと違う事をしたから?)
梨子(ちょっと待って……昨日は何も起こらなかったけど、今日は車が突っ込んで来た……)
梨子(昨日も今日も、本来起こってた事が起こらなくなってる……)
梨子(もしかして、この先何が起こるのか……分からなくなっちゃったって事!?)ゾッ
梨子(そうだ……そうだよ…………。起こる筈のことが起きないって事は、今迄無かったトラブルが起こるって事だ!)
梨子(私、私……とんでもない事しちゃった……今回こそ、今回こそって、思ったのに……!)
曜「梨子ちゃん!」
梨子「っ!」ビクッ
曜「どうかした……?」
梨子「ううん、何も。ぼーっとしてた」
曜「……涙、出てるよ」
梨子「え……?」ポロポロ
曜「大丈夫?」
梨子「うん…………うん………………曜ちゃんも、涙出てるよ……」ポロポロ
曜「え……?」ポロポロ
梨子「…………」ギュッ
曜「…………怖かったね」ギュッ
梨子「…………うん」
────────────
──────
──
〜浦の星女学院〜
曜「さあ!!プールの授業だよ!」
梨子「ふふ、そうだね」
梨子(……あれから、特に何も無かったけど……やっぱり今迄と皆の会話とか違う気がする)
梨子(意識してなかったけど、昨日もそうだったのかな)
曜「梨子ちゃんも楽しみ?」
梨子「うん……泳ぐのは得意じゃないけど、楽しみだよ」
曜「ふふ♡私が教えてあげるね♡」
梨子「えへへ♡お願いします♡」
曜「あー、まさかエッチな事考えてる?♡」
梨子「そ、そんな事ないもん!」アセ
曜「慌てちゃってー♡」
梨子「もう!」テレ
曜「ふふふ♡顔赤いよ〜♡」
梨子「そんな事なーい!」テレ
梨子(……あれ?このやり取りって)
曜「あははは♡顔真っ赤じゃん……うおっ!?」コケッ
梨子「危ない!!」ギュッ
曜「きゃっ」
ズテーン
曜「あたたた……梨子ちゃん!大丈夫?」
梨子「う、うん……いたた」
「きゃあーー!!」
パリーン!!
梨子「えっ……!?」
梨子(嘘……だよね……こんな事……)
梨子(考えてるよ場合じゃない!)
梨子「ええいっ!!!」ゴロゴロゴロ!
曜「んぇえ!?」ゴロゴロ
梨子「形振り構うもんか!!」ギュゥ!
曜「むぐっ」
パラパラ
「ごめん!大丈夫!?」
梨子「大丈夫です!」
曜「苦しい………………」
「どうしたの!?わっ!!」
「私先生呼んでくる!」
梨子「な、何とかなった……」ホッ
曜「……っ!!」バンバン
梨子「いたたっ……どうしたの?」
曜「ぷはっ……息ができなかったんだよ……」
梨子「あっ……ごめんね」
曜「ううん……それよりもありがと。何回も……何回も……」
梨子「気にしないで」
曜「うん……」
梨子「立てる?着替えに行こ?」
曜「……うん、そうだね」
────────────
──────
──
〜浦の星女学院、プール
イチニーサンシー
ニーニーサンシー
梨子(曜ちゃん……大丈夫かなあ……)
梨子(…………何か起こるかどうかさえ分かんないんだよね)ハァ…
「コラー桜内ー。渡辺の胸ジロジロ見てどうしたんだー?」
「あはははっ」
「いつもの事だもんねー♡」
梨子「そ!そそ!そんな事ありません!!」カオマッカ
曜「あはは♡梨子ちゃんの控えめおっぱい、マシュマロみたいな揉み心地で好きだよ!」ニコ
梨子「もーーー!!ホント何言ってんのぉーーっ!!!」カオマッカ
「ははは!渡辺、お前の就職先このプールの清掃員な」
曜「なんでぇ!?」ガビーン
曜「ぷはっ…………はっ…………」バシャバシャ
梨子(曜ちゃん……今のところは何のトラブルも無い……ね)
曜「ふぁあ……!…………あ、おーい!」フリフリ
梨子「……!えへへ♡」フリフリ
ラブラブダー
キャーキャー
梨子「も、もう……」テレ
曜「えへへ♡……えいっ」ザプン!
梨子「あっ」
梨子(曜ちゃん……楽しそう……)チャポン
梨子(本来だとこの後足をつるんだけど……)スイスイ
曜「ぷはっ…………はっ…………はっ……ゴボッ!」
梨子「っ!!!」
梨子(いけない!足つっちゃったんだ!!)バシャバシャ
「……あれ、曜ちゃんの様子おかしい?」
「渡辺!……渡辺!!」ザプン!
曜「ガハッハッ……たすっ!」
梨子「曜ちゃん!!」ダキッ
曜「りっ!梨子っ!!」
梨子「落ち着いて私に捕まって……!」
曜「っ!」ギュッ
「渡辺!大丈夫か!」
曜「ゴホッ……ゴホッ…………はい、何とか……」
「無茶するな。とりあえず保健室に行こう」
梨子「私付き添いますね」
「すまないが頼む」
〜浦の星女学院、保健室登校〜
「足も問題無し。ピンピンしてるし大丈夫でしょうが……」
曜「はい……?」
「疲労が溜まっているのかもしれません。渡辺さんが利用したいのなら、ベッドで少し横になっても構いません、よ」
曜「分かりました。……では、お言葉に甘えて」ゴロン
「分かりました。無理せずゆっくりお休み下さい。先生は少し所用があるので離れますが、桜内さんも、あまり長居しないようにね」
梨子「はい」
カララ…ピシャッ
梨子「ふう、一時はどうなる事かと思った」
曜「…………」
梨子「どうかした?」
曜「ううん。…………なんだか今日は、梨子ちゃんに助けられっぱなしだなぁ……って」
梨子「そうかな……そうかも」クス
曜「……凄いね。梨子ちゃんは」
梨子「え?」
曜「いや、何となく……ね」
梨子「そう……」
曜「……」
梨子「……」
曜「……私、数年前からたまーに変な事考えちゃう癖が付いちゃってね」
梨子「……うん」
曜「この世の何もかもは、いつか無くなっちゃうのに、何をそんなに必死になってるんだろうなーって、思う事があるんだ」
梨子「……」
曜「特に……命に関わる話とかを見ると、つい考えちゃうんだ。全部、無駄なんじゃないかって…………」
梨子「そっか……」
曜「生き物はいつか死んじゃうし、物もいつか壊れちゃう。記憶も……」
梨子「……」
曜「あっ、ごめんね!?こんな暗い話しちゃって……」アセアセ
梨子「ううん、大丈夫。話せばスッキリすることもあるもんね」
曜「…………うん」
梨子「…………それでも」
曜「……?」
梨子「……それでも、私は無駄だったなんて思いたくないよ。いつか消えてしまうとしても関係無いよ」
梨子「私は覚えてる。……大切な人の事。……何が起こったか全部」
梨子「誰の記憶からも消えちゃうなんて事無いと思う。……きっと皆そうだと思う」
梨子「…………私はそう思いたい……かな」
梨子「だから……今を大切にしていきたいなって思うよ」
曜「そっか……」
梨子「うん。だから、気にしないで欲しい。思ってる事言ってくれて、嬉しいよ」ギュッ
曜「うん……」
梨子「ゆっくりしててね。私、傍に居るから」
曜「……ありがとう」
────────────
──────
──
〜三津〜
梨子「……車、来なかったな」
梨子(来るとしたら違う車だろうけど)
曜「え?」
梨子「ううん、何でもないよ」
曜「そっか」
梨子「……」
曜「……」
梨子(もう、そろそろお別れの場所だ)
梨子(でも、ここで大人しく別れたらダメ……だよね)
曜「じゃあ、また明日ね」
梨子「…………今日、曜ちゃんのお家行っても良い?」
曜「え?…………珍しいね」クス
梨子「たまには曜ちゃんのお家に遊びに行きたいなって」
曜「そっか。じゃあ…………って思ったけど、今日用事あるんだった」
梨子「そうだったの?」
曜「うん。ちょっと買い物に」
梨子「私もついて行っていい?」
曜「え?ど、どうしてまた」
梨子「何となく……かな」
梨子(どうにかして、一緒に居ないと……また……)
曜「…………1人で大丈夫だよ」
梨子「い、一緒に行きたいの!私も、欲しいものがあるから」
曜「もう、しつこいよ?」
梨子「う…………」アセ
梨子(どうしようどうしよう!こんなの考えてなかったよ……!)
曜「じゃあ、また明日ね」
梨子「待って!待って!!お願いだから待って……」ギュッ
曜「もう、……一体どうしたの?」
梨子(絶対……絶対離したらダメ……!どうにかして、どうにかして曜ちゃんを止めないと!)
曜「梨子ちゃん。困るよ」タハハ
梨子「その……えと…………」
梨子(何か……何か言わないと!)
曜「…………梨子ちゃん?」
梨子「…………き、なの」
曜「え?」
梨子「好き、好きなの」
梨子(違う!違う!!今はそんな事……そんな事言ってる場合じゃ)
曜「ふふ、朝も言ってたね」クス
梨子「違うの!私っ!本気なの!!本気で曜ちゃんの事が大好きなの!!」ギュッ
曜「えっ?」
梨子「好きなの……好きなの!好きなの!!」ポロポロ
曜「ち、ちょっ!?」
梨子「好きなの!もう!どうしようも無い位!好きなの……!大好きなの!」ポロポロ
梨子(止まらない……今伝える事じゃないのに!)
梨子「好きなの!好きで……好きで!好きで好きでどうしようも無い位好きなの!!」
梨子「ずっと一緒に居たいの!ずっと隣に居たいの!!ずっと……!ずっ……ゴボッ!……っ!」ボロボロ
曜「わ、分かったから、ね?」
梨子「いやなの……!嫌なっ……っ……!はぁっ……はっ……っ……!」ボロボロ
曜「…………」
梨子「離れたくないの……!!ずっと!ずっと私の傍に居て欲しいの!曜ちゃんがっ曜ちゃ……ゴホッ……曜ちゃ……っ……!曜ちゃっ……!」ボロボロ
梨子「ずっと……!ずっと!曜ちゃんとずっと一緒にいたいの!!」ボロボロ
梨子「好きだから………………だから……………………っ………………お願いだから………」ギュゥッ!!
曜「…………もしかして、私の身に何か起こるの?」
梨子「……そうっ!そうなのっ!曜ちゃんはこのままだと死んじゃうの!だから!だからっ!!だからぁ!!」ボロボロ
梨子(何でそんなこと……言ったって信じて貰える訳ないのに!)
曜「……そっか」
梨子「もう何回も!何回も何回も曜ちゃんが死ぬ所見てきた!何回も!何回も何回も!何回も…………っ」
梨子「頭ぶつけて!落石に潰されて!ガラスが突き刺さって!溺れて!蜂に刺されてアナフィラキシーショック起こして!車に轢かれてぐちゃぐちゃになって!」
梨子「だから!だから……今回は……今回こそ!絶対に曜ちゃんを守るの!好きだから!大好きだから!!」
曜「そうだったんだね……ありがとう」ギュッ
梨子「曜……ちゃん……?」ポロポロ
曜「何回もって事はさ……私はきっと今日死んじゃう運命なんだよ」
梨子「ぇ………………」
曜「きっと……そうなんだと思う」
梨子「なんで、なんでそんな事言うの……なんで……」ボロボロ
曜「……」
梨子「なんで!?なんで!?なんでぇぇ!!?」ボロボロ
曜「……梨子ちゃんを見てると、なんとなく思うんだ」
梨子「運命だとか!そんなの関係無い!私は!私は!曜ちゃんに生きて欲しいの!……だから……だから……その為に…………私は……」
曜「……その気持ちだけで、私は充分嬉しいよ」
梨子「嫌!……死んじゃうんだよ?もう、離れ離れなんだよ?私も、皆も、お母さんやお父さんとも!皆!」
曜「…………分かってるよ。怖いに決まってる」
梨子「だったら…………だったら!」
曜「梨子ちゃん」ギュッ
梨子「…………?」
曜「今までは梨子ちゃんに危害が無かったけど、もしこの後私が死ぬ時に梨子ちゃんが傷付いたり、一緒に死んじゃうってなった方が、私は悲しいんだ」
梨子「そんな……こと……」
曜「無いとは、言いきれないよ。梨子ちゃんが車に轢かれかけたのも、割れた窓が刺さりそうになったのも、そのせいでしょ」
梨子「でも……でも!でも!!」ポロポロ
曜「梨子ちゃんが好きな人を守ったように、さ」
梨子「っ…………」
曜「……返事、しなきゃね」
梨子「…………やだ…………やだ」ポロポロ
曜「……私に、こんな罪悪感を持たせたんだから……責任、取ってよね」
梨子「え……?」
曜「私も、好きだよ……梨子ちゃん」
梨子「曜……ちゃん」
曜「こんな美人で、優しい女の子の告白、断る事なんてできないよ」ギュゥ
梨子「ばか…………私も好きでしたとか、言ってよぉ…………」ポロポロ
曜「……………………ごめんね。私、皆が思ってるような人じゃないから……。鈍くて、臆病だから…………。もっと早く気付いてたら、こんな辛い思いさせなかったね」ギュゥ
梨子「曜ちゃん……」ポロポロ
曜「……めん」
梨子「……え?」
曜「ごめん……ごめん……ごめん……」ポロポロ
梨子「なんで……曜ちゃんが謝るの……?」
曜「今日、言ってたよね。いつか消えてしまうとしても関係無いって。今を大切にしていきたいって……」
梨子「……」
曜「確かにそうだと思う。どうしようもない事考えて、物思いにふけてたって、何にもならないもん」
梨子「だったら……だったら生きてよ!私を巻き込むとか!そんなの関係無い!私の事好きになったなら!生きてよ!隣に居てよ!!一緒に学校行って、授業受けて、あそんで、いっぱい……いっぱい……」
梨子「だから……だから!死んじゃうなんて言わないでよぉ!!!ずっと!ずっと傍に居てよぉ!!!」ボロボロ
曜「梨子ちゃん!」ガシッ
梨子「曜……ちゃん……?」
梨子(震えてる…………)
曜「私は、梨子ちゃんに前を向いて生きて欲しい。梨子ちゃんが精一杯頑張ってくれた事、とても嬉しいよ」
梨子「嫌……嫌だよ…………」
曜「私は多分もうダメなんだと思う。何となく分かるんだ。……だから、最期は……さ」
梨子「…………」ポロポロ
曜「……笑顔で……見送ってよ」
梨子「なんで………………なん……で……」
曜「お願い…………。大好きな人を残すのは嫌だ………………けど、大好きな人を……梨子ちゃんを万が一道連れにしちゃうなんて……できる訳ない」
梨子「……」
曜「だから………………」
梨子「…………………………うん」
曜「ありがと……梨子ちゃん」ギュ
曜「ありがとう、私の命を守ってくれて」
曜「ありがとう、私のことを好きになってくれて」
曜「あり……がと、私の……私の人生を……救って……くれ……っ」ポロポロ
梨子「曜ちゃん……曜ちゃん……」ギュゥ
曜「……怖い……怖いよ…………!怖いよ……っ」ポロポロ
曜「嫌だよ……折角、折角…………!生きる意味も!大切な人も!…………っ…………!」ポロポロ
梨子「曜ちゃん……曜ちゃん…………っ私、私やっぱり……!」ポロポロ
曜「はぁ……はぁ…………。それはダメ」
梨子「っ………………」
曜「私も……私にも、好きな人……梨子ちゃんを守らせて…………」ポロポロ
曜「今回こそは…………」ポロポロ
梨子「ぅぅ…………」ポロポロ
曜「……………………」
梨子「………………」
曜「じゃあ……ね。梨子ちゃん」ポロポロ
梨子「あっ……」
曜「…………」スゥ…
曜「また…………また、明日……」ニコッ
梨子「……っ」
梨子「……」グシグシ
梨子「……うん!また……また明日ね……!」ニコッ
曜「じゃあね…………」テクテク
梨子「…………」
梨子「……………………」ペタン
梨子「………………っ」
梨子「…………っ………………うぅっ…………」ボロボロ
梨子「ぐすっ…………うぅっ……ひぐっ……曜ちゃん…………曜ちゃん………………」ボロボロ
梨子「………………」グシグシ
梨子「……そんなの、やっぱり嫌」
梨子(だって、ここまで守り抜いたんだもん………………)
────────────
──────
──
〜曜'sハウス〜
曜「…………」
曜「……何やってるんだろ……私」
曜「………………結局、あの日から何も変わってないんだな」
曜「…………」
コンッ
曜「……?」
コンッコンッ
曜「え?窓?」
曜「…………」
曜「すぅ…………はぁ………………」
曜(これが……私の…………)カララ
梨子「きゃあ!!」ズテーン
曜「わぁっ!?何何!?」ビクッ
梨子「いたたた……」
曜「り……梨子ちゃん!?」
梨子「しっ……バレちゃうよ」
曜「いや、しっ……て……」
曜「……何してるの?」
梨子「曜ちゃんに会いに」
曜「そういう事じゃない!!」
梨子「っ!」
曜「……ごめん」
梨子「…………そんなに、嫌なの?」
曜「……ごめん」
梨子「……好きな人と、ずっと一緒に生きていたいって思う事、そんなにダメな事なの……?」ウル
曜「……違う」
梨子「……?」
梨子(何だか、いつもの曜ちゃんじゃ無いみたい)
曜「…………私ね、知ってるの。梨子ちゃんが何をしてるのか」
梨子「……え?」
曜「何回"今日"やったの?」
梨子「え?…………え?」アセ
曜「……何回やり直したの?」
梨子「どういう……こと……?」
曜「…………私ね、何年か前に梨子ちゃんと同じ事やったの」
梨子「え……それって」
曜「うん。タイムループ……ってやつなのかな。当時はそんな言葉知らなかったけど」
梨子「じゃあ……曜ちゃんも、誰かを助ける為に、その日をやり直したって事?」
曜「そ、友達が死なないように頑張ってさ。……でも、3、4回目位で諦めちゃったんだ」
梨子「あ……」
曜『何回もって事はさ……私はきっと今日死んじゃう運命なんだよ』
曜『…………もしかして、私の身に何か起こるの?』
曜『……私、数年前からたまーに変な事考えちゃう癖が付いちゃってね』
曜『……凄いね。梨子ちゃんは』
曜『ううん……それよりもありがと。何回も……何回も……』
梨子(そっか……!だから、だからあの時……!)
梨子(曜ちゃんの雰囲気が時々おかしくなったのも……!)
曜「……その時からさ、なんか、どうにもならない事ってあるんだな〜とか考えちゃうようになってさ」
梨子「……あっ」
曜『この世の何もかもは、いつか無くなっちゃうのに、何をそんなに必死になってるんだろうなーって、思う事があるんだ』
曜『特に……命に関わる話とかを見ると、つい考えちゃうんだ。全部、無駄なんじゃないかって…………』
曜『生き物はいつか死んじゃうし、物もいつか壊れちゃう。記憶も……』
梨子(あれも……これも……全部!)
梨子「そんな……事……」
曜「……嘘、ついててごめんね」
梨子「じゃあ、私が今日やった事も……。恥ずかしがってたのに突然いつもの曜ちゃんに戻ったのも……」
曜「うん。バタフライエフェクトを狙ってるんだなって途中で分かったから。……確信に至ったのは、車に轢かれそうになった時だけどね」
梨子「だから、震えてたんだ……」
曜「……それもある……が正しいかな」
梨子「え?」
曜「私の友達の最終的な死因は、車に轢かれた事だったんだ」
梨子「……そう、なんだ」
曜「キツいよね……大事な友達が、目の前でお腹から内蔵出ちゃって、腕も足も曲がっちゃいけない方に曲がってて……」
曜「おかしいよね……何も悪いことしてないのに……何でこんな死に方しちゃうのって……。なんで、こんなことするのって……」ポロポロ
梨子「曜ちゃん!」ギュッ
曜「梨子……ちゃん……」ポロポロ
梨子「もう……大丈夫……。私が、ずっと傍に居るから……!友達の代わりには……なれないけど……それでも……!」ポロポロ
曜「ううん。梨子ちゃんは梨子ちゃんだよ。あの子の代わりじゃない。また違う形の……大切な人」
梨子「うん……」
曜「ありがとう……」
梨子「私は、何があっても絶対傍に居る……。そう決めたんだ」
曜「梨子ちゃんは凄いよ……。私には、できなかった……」
梨子「……ふふ、でもちょっと嫉妬しちゃう。こんな時位、頭の中全部全部私に染まって欲しい。私の事……想い……身体……何もかも全部私の事で塗り潰して欲しい」
曜「あはは……どんだけ、私の事好きなのさ……」ポロポロ
梨子「いっぱい……いっぱい…………好き…………。私の……私の全てを捧げたいの……」ギュゥ
梨子「大好きなの……」
曜「……っ……重いよ…………。ぐすっ…………でも…………嬉、しい……あり、がと……」ポロポロ
梨子「えへへ…………違うよ。そこは……」
曜「……あはは。……私も、大好きだよ。梨子ちゃん」
梨子「曜ちゃん……」ギュ
曜「梨子ちゃん……」ギュゥ
梨子「…………」メトジ
曜「…………ちゅっ」
梨子「ん…………」
曜「……ぷはっ」
梨子「ぷはっ……」
曜「愛してるよ、梨子ちゃん」クス
梨子「私も愛してる、曜ちゃん」クス
シュゥゥゥゥゥ
梨子「……え?何の音?」
曜「スマホから煙……!?梨子ちゃ」
バゴォォォーーン!!
梨子「……けほっ……あつい…………」
梨子「……なに、これ。……真っ赤っか」
梨子(動けない…………頭が……ぼーっと…………)
梨子「よ……ちゃ……」
梨子「…………」
梨子(そっか…………スマホ…………爆発して………………)
梨子「けほ…………あつい…………くるし……ぃ…………」
梨子(結局……こうなっちゃったんだ…………)
梨子「…………でも」
梨子(それでも……私は……)
梨子「曜ちゃんの…………けほっ……隣に居れて……嬉しい…………」ポロポロ
梨子「……ずっと…………一緒……だ……ね…………」
梨子「よう…………ちゃ………………」
────────────
──────
──
「…………ここは……どこ」
「梨子ちゃん」
「曜ちゃん……曜ちゃん……また、また会えた」
「ふふ、起きるの待ってたんだよ」
「えへへ、ごめんね」
「ううん。寝顔堪能させて貰ったから」
「もう……ばか……」
「あはは、じゃ……行こ?」スッ
「うん」ニギッ
これからはずっと────。
ずっと──。
|c||σ.-σ||「終わり」